手汗で悩んでいる人に

手汗で苦しんでいた私を救ってくれた言葉

手汗が酷くて、本来の自分の実力を人前で出し切れない人は案外多いのではないでしょうか。言い訳がましく聞こえるかもしれませんが、手汗にはそれほどの威力があると思うのです。

 

私は小さい頃から手汗にコンプレックスを持っていました。小学校低学年の頃、怖がりだった私は眠りにつく時に母親に手を繋いでもらいたくて頼むと、『あなたの手がすごく湿っているから嫌なの、ごめんね』と言われ子供ながらに深く傷ついた記憶があります。母親はそんなに私が傷ついたとは今でも思っていないでしょう。
それからというもの私の手は汚いんだ、と思うようになり、手汗を気にすれば気にするほど更にひどくなっていきました。そしていつからか、人と手が触れ合うことに恐怖を感じ始めました。たとえば、人となにか真剣に話していてもその人が急に握手をしてくるんではないかと思いはじめると全く話に集中できなくなったりします。いつもの自分ではなくなる感じです。そしてそれは、いつも重要なシーンで起こりました。無心になれないのです。

 

そんなことが高校生くらいまで続きました。でもそんな私にも転機が訪れたのです。それは、ある看護師さんとの出会いでした。私が風邪で訪れた病院で注射をしてくれた看護師さん。私はまた注射で『手を触れられる恐怖』を感じ、手汗がドバーっと溢れ出しました。でも避けては通れない道です。それでもそのままなるべく見られないようにこぶしを握り締めて待っていると、看護師さんは『楽にしててねー』と言いながら私のこぶしを崩すように触りました。その時看護師さんの手に私の汗がつきました。とっさに私は『ごめんなさいっ!』と謝ると看護師さんは笑ってこういいました。『大丈夫よ。緊張しないで。汗が気になるの?私も同じように悩んでたことがあるからよくわかるけど、隠さずに相手にいうといいよ。気が楽になるから。』と、それはもう、今までの私の全てを見ていたかのような言葉でした。
病院は混み合っており、看護師さんはそのまま注射をすぐに済ませ忙しそうにいなくなりました。なぜそれほどまでに私の気持ちがわかったのかは今でもわかりませんが、きっと彼女も同じように悩んで解決した方だったのでしょう。
今まではずっと、手汗をかくさなければ…という気持ちばかり持っていました。手汗をカミングアウトしてわかってもらおうなんて思ったことすらなかったのです。

 

それからというもの、友人にもきちんと打ち明け、相談に乗ってもらうことで随分気が楽になりましたし、もう手汗を隠す必要はないんだと思うと余裕が生まれ、手汗で困ることも昔よりはずっと減りました。あの時看護師さんに言われた言葉が、手汗で苦しんでいた私を救ってくれたのです。名も知らぬ看護師さんですが、本当に感謝しています。

 

手汗の悩みには